行政や大企業が実証実験や意見交換を口実にノウハウを奪い入札で他社に発注する「踏み台商法」への警鐘と、勝川のRoom8が独法案件で2〜3年無償対応の末に立ち消えとなった実例を踏まえ、上ではなく顧客起点で価値を積み上げる重要性を提案
- 「実証実験」「意見交換」で情報を抜かれ仕様化される
- 「制度上問題ない」で信頼軽視が横行
- 独法案件で無償企画が繰り返され担当異動で消滅
- 顧客に向き合い積み重ねが真似できない強みを生む
- 木下斉・エリア・イノベーション・アライアンス代表理事・2010年内閣府政策調査員
- 勝川のRoom8で独立行政法人案件が2〜3年で立ち消え
こんにちは、春日井コワーキングスペースRoom8オーナーの鶴田です!
Room8に集まる起業家さんたちと話していて、昔からよく聞くセリフがあるんですよね。
「行政からの大きな案件、取れないですかね?」
「市役所の仕事とか、単価高そうで良いですよね」
「大企業案件、一本取れれば当分安泰じゃないですか?」
ああ、その気持ち、めちゃくちゃ分かります。
僕だって昔は「大きなところと組めば安心」「知名度のある会社と一緒にやれば箔が付く」って思ってました。実際、Room8だって某独立行政法人から声をかけられた時は「おお、大きな案件だ!」って単純に喜んでましたから。
でも、先日Facebookで地域再生の第一人者である木下斉さんの投稿を見て、背筋が寒くなったんです。
実は、Room8が現在この勝川で営業できているのも木下さんにお声がけいただいたご縁があるのですが、その木下さんが「踏み台商法」という恐ろしい実態について警鐘を鳴らされていて。
読んでいて「あ、これ僕らがやられかけたやつじゃん」って気づいたんですよね。
今日は、起業家のみなさんが知っておくべき「甘い罠」について、木下さんの投稿をシェアしつつ、Room8で実際に経験した話も交えてお伝えしたいと思います。
これ読んで「やられた…」って思った人、残念ながらあなたも被害者の一人かもしれません。
「踏み台商法」とは何か – 地域再生の第一人者からの警鐘
まず、木下斉さんについて簡単にご紹介すると、エリア・イノベーション・アライアンス代表理事として、全国各地の地域再生に実際に取り組まれている方です。
経歴を見ると、その権威性は圧倒的で:
- 内閣府政策調査員(2010年)
- 内閣官房地域活性化伝道師
- 東京大学建築学部非常勤講師
- 中小企業基盤整備機構中心市街地活性化/商店街アドバイザー
- 一般社団法人公民連携事業機構理事
単なるコンサルタントではなく、政府機関とも連携しながら、自ら事業を運営する事業者として、行政や大企業と向き合ってきた当事者なんですね。
その木下さんが先日、衝撃的な投稿をされました。
詳しくはこちらの記事をぜひ読んでください:
要約すると、こんな話です:
実証実験という名の「情報泥棒」
行政や大企業が民間に声をかけて「一緒に実証実験やりましょう」と持ちかける。民間は「おお、いい話だ!」と思って無償でノウハウを提供。実証実験が成功すると、その成果を仕様書にそのまま書き起こして別の業者に入札で発注する。
つまり、最初の民間企業は完全に「踏み台」扱い。
「制度的に問題ない」という魔法の言葉
なぜこんなことが平然と行われるのか?行政には「売上」という概念がないからです。どれだけ民間から恨まれても、翌年また自動的に予算がつく。顧客に見捨てられて倒産するリスクがゼロだから、信頼関係を軽視できるんですね。
大企業も似たようなもので、担当者の評価さえ上がればOK。会社の看板で信用を得て、中小企業やスタートアップからノウハウを吸い上げて本体部門に横流しする。
結果として地域が衰退していく
信頼を失った地域には、まともな民間は二度と協力しなくなる。残るのは「仕様通りにしか動けない業者」や「行政の顔色しか見ない御用業者」ばかり。
最終的には人手不足で、予算があっても誰も引き受けてくれない状況になる。
木下さんの投稿を読んで「あー、これ知ってる構造だわ」って思った人、きっと多いはずです。
Room8も経験した「振り回され案件」の実態
で、木下さんの投稿を読んで「あ、これ僕らの話じゃん」って思ったんですよね。
実は数年前、某独立行政法人から連絡があったんです。
「地域活性化のためのコワーキングスペース立ち上げを検討していて、ぜひ協力していただけませんか?」
しかも条件がすごく良かったんです。家賃も人件費も全部こちらで負担します、必要な備品もこちらで用意します、と。
当時の僕は単純でした。「おお、これはすごい条件だ!これは絶対に頑張らねば!」って。
無償奉仕の始まり
まずは備品の選定から始まりました。どんな机がいいか、椅子はどういうタイプが使いやすいか、Wi-Fi環境はどう構築するか…Room8で培ったノウハウを全部提供しました。
次に事業計画書の作成。どんなターゲットに、どんなサービスを、どんな料金体系で…これも完全無償で作りました。
家賃も人件費も出してもらえるならと思って、せっせと企画書を作ってました。
無限ループの始まり
ところが、担当者が上司に提出すると…
「やっぱり、あっちの既存施設を活用する方向で検討したい」
え?じゃあ最初の企画は何だったの?
でも「こんな好条件の案件は他にない」と思って、また一から企画書を作り直しました。既存施設に合わせたレイアウト、運営方法、料金設定…
今度こそ大丈夫だろうと思って提出すると…
「上の方から、こんなサービスも追加できないかと言われまして」
また振り出しに戻る。
2-3年の虚無
これを2-3年繰り返しました。
その間、Room8は何度企画書を作り直したことか。全部無償で。「家賃も人件費も出してもらえるんだから」と信じて。
でも結局、担当者が異動になって、全てが立ち消えになりました。
「あー、そういうことね」って、今なら分かります。
担当者は自分ではコワーキングスペースのノウハウを持っていない。でも上司からは「企画を作れ」と言われている。だったらRoom8に作らせて、それを自分の企画として提出すればいい。
もし上司に通れば自分の手柄、通らなくても「専門家と一緒に検討した結果です」と言い訳できる。
完璧な戦略ですね!
コワーキングスペースで見る「甘い罠」の数々
Room8で起業家さんたちと話していると、似たような話をよく聞くんですよね。
「意見交換しましょう」という魔法の言葉
Aさんのケース:
ある大企業から「新しいサービスを検討していて、ぜひ意見交換させてください」と連絡が。1時間ほど打ち合わせして、Aさんが持っているノウハウや業界の知見をたっぷり話した。
数ヶ月後、その会社がAさんのアイデアにそっくりなサービスをリリースしていた。
「意見交換だから情報交換ですよね?」って言われたら、確かにそうなんですが…
「実証実験やりませんか?」の甘い罠
Bさんのケース:
地方自治体から「新しい取り組みの実証実験をやりませんか?成功したら本格導入も検討します」と声がかかった。3ヶ月間無償でシステムを提供して、利用者からも好評だった。
でも本格導入の話になったら「予算の関係で一般競争入札になります」。
当然、最安値の業者が落札。Bさんが3ヶ月かけて作り上げた仕様書を元に、別の会社がシステムを構築した。
「大企業からの投資という甘い罠」
Cさんのケース:
名の知れた大企業のCVCから実際に投資を受けた。「協業でさらなる成長を」という話だった。
ところが出資を受けた途端、「この分野の実証実験やってくれない?」「あの市場の検証もお願い」と、次々に依頼が。出資者だから逆らえない。
本業の技術は契約で守られているが、依頼された実証実験のノウハウはダダ漏れ。
数ヶ月後、その大企業が実証実験で得た知見を使って新サービスを発表。「あなたの本業とは違う分野なので問題ないですよね?」
投資を受けたことで、逆に「便利な情報源」にされていました。
「契約書に書いてあるじゃん」というケース
Dさん(知り合い)のケース:
地域でアウトドア系のサービスを展開している会社。地域貢献も積極的にやっていて、自治体からの信頼も厚い。
ある時、自治体から「利用者が少なくて困っている公園を活性化してほしい」と相談が。契約書を見ると「将来的な継続発注は保証されません」とハッキリ書かれている。
でもDさんは受注した。理由は「アイデアパクられても、素人がうちのサービスを真似できるわけないから」。
これは一つの対処法ですよね。 簡単に真似できない技術やノウハウがあれば、むしろ実績作りに活用できる。
みんなが陥る「幻想」
これらの話に共通するのは、起業家側の甘い期待なんですよね。
- 「大きなところと組めば安心」
- 「行政案件は安定している」
- 「有名企業との協業で一気に成長できる」
でも現実は、相手にとって都合の良い「情報源」として利用されるだけ。
木下さんが指摘する通り、組織の看板と個人の誠実さは全く別物です。
大切なのは、相手の肩書きじゃなくて、目の前の人間がちゃんとしているかどうか。
もちろんいい人も沢山います。
結局、大切なのは目の前のお客さん
これらの話を聞いていて、僕が思うのは一つのことです。
みんな、お客さんの方を向いてない。
「上」ばかり見てる起業家たち
Room8に集まる起業家さんたちを見ていると、どうしても「上」を向きがちなんですよね。
- 行政案件が取れれば安定する
- 大企業と組めば一気に成長できる
- 有名な会社と協業すれば箔が付く
でも、肝心のお客さんのことは二の次になってる。
木下さんが指摘している通り、売上=信用の現金化なんです。その信用って、誰からもらうものですか?目の前のお客さんからですよね。
Room8が学んだ「地に足をつける」ことの大切さ
僕らがあの某独立行政法人に振り回されていた2-3年間、実際のお客さんは何をしていたかというと、普通にRoom8を利用してくれて、普通にお金を払ってくれていました。
当たり前のように、毎月。
一方で、家賃も人件費も出しますと言っていた某独立行政法人からは、結局1円ももらえませんでした。
どっちが本当にありがたい存在だったか、今なら明確に分かります。
「信頼」は小さな積み重ねから生まれる
Room8のお客さんたちは、毎日の小さな信頼の積み重ねで関係を築いてくれています。
- Wi-Fiがちゃんと繋がる
- 椅子が座りやすい
- 困った時に相談に乗ってくれる
- 約束した時間にちゃんと開いている
そんな地味で当たり前のことを積み重ねた結果が、今のRoom8なんです。
一方で、行政や大企業との関係って、担当者が変われば一瞬で終わるんですよね。あの2-3年間の努力も、担当者の異動で一瞬で無になりました。
「お客さんファースト」が最強の戦略
結局、一番安定して、一番成長できて、一番やりがいがあるのは、目の前のお客さんにしっかり向き合うことなんじゃないでしょうか。
お客さんが困っていることを解決する。
お客さんが喜ぶサービスを提供する。
お客さんとの約束をちゃんと守る。
それだけです。
行政案件や大企業案件に憧れる気持ちは分かります。でも、それって結局は「楽して儲けたい」という下心じゃないですか?
本当に価値のあるサービスを作れば、お客さんは必ずお金を払ってくれます。 それを積み重ねていけば、自然と大きくなっていきます。
遠回りに見えて、実は一番の近道です。
「真似できない」は一日にして成らず
先ほど紹介したDさんの話、「アイデアパクられても素人が真似できない」と言えるのは、実は長年の積み重ねがあるからです。
Dさんの会社がアウトドアサービスで評判が良いのは、お客さんと向き合って試行錯誤を重ねてきた結果なんですよね。
- どうすればお客さんに安全に楽しんでもらえるか
- 天候が悪い時はどう対応するか
- 初心者でも楽しめるにはどうすればいいか
- リピーターになってもらうには何が必要か
そんな日々の小さな課題を一つ一つ解決して磨いてきた。だからこそ「やり方だけ知っても真似できない」レベルに到達したんです。
結局、これも「お客さんファースト」の結果なんですよね。
仮に行政が仕様書をパクって別の業者に発注しても、本当に大切な部分は仕様書には書けません。お客さんとの関係の中で培った細かい気配りや技術は、簡単にコピーできるものじゃない。
お客さんをちゃんと見て積み重ねてきたからこそ、「どうぞパクってください」と言える強さがあるんです。
まとめ
今回、木下斉さんの「踏み台商法」投稿を読んで、改めて思ったことがあります。
結局、楽な道なんてないんですよね。
行政案件も、大企業案件も、「楽して大きく稼げる」なんて甘い話は存在しない。むしろ、そういう話に釣られると、時間とエネルギーを無駄に消費するだけ。
Room8の某独立行政法人案件も、まさにそうでした。
あの2-3年があったから今の僕らがある、なんて美談にするつもりはありません。単純に時間の無駄でした。その間に目の前のお客さんともっと向き合っていれば、もっと良いサービスが作れたはずです。
「上」じゃなくて「前」を見よう
起業家のみなさん、行政や大企業という「上」ばかり見てないで、目の前のお客さんという「前」を見ませんか?
お客さんが困っていることを解決する。
お客さんが喜ぶサービスを提供する。
お客さんとの約束をちゃんと守る。
それを積み重ねていけば、自然と「真似できない」レベルに到達します。 そうなったら、もう踏み台にされる心配なんてありません。
木下さんの記事、ぜひ読んでください
今回紹介した木下さんの記事、本当に勉強になります。特に有料部分には、今回紹介しきれなかった具体的な手口や対処法が詳しく書かれています。
現場を知り尽くした第一人者からの警鐘です。起業家として知っておいて損はありません。
お客さんファーストで、一緒に頑張りましょう!
